SYMPTOMS & RISKS

疑う

肺NTM症を
疑う契機とは?

〜リスク因子・症状〜

  • 肺NTM症は、呼吸器疾患(主に肺疾患)や免疫能の低下を有する患者、やせ型の患者などで発症しやすいことがわかっています1)
  • 肺NTM症の症状は、発熱・夜間盗汗、全身倦怠感・易疲労感、体重減少などの全身症状と、咳嗽・喀痰、血痰・喀血、息切れ、呼吸困難、胸痛などの呼吸器症状が主体です2)
  • 症状は多彩で非特異的なため、併存する呼吸器疾患がある場合は、症状からの鑑別は困難です2)
  • 病初期は無症状のこともまれではなく、健康診断や他疾患診療中に画像検査がきっかけとなって、偶然、診断されることが少なくありません2)

リスク因子

呼吸器疾患や免疫能の低下
肺NTM症のリスク因子です

肺NTM症のリスク因子

  • 肺NTM症は、呼吸器疾患や免疫能低下のある患者、やせ型の患者などで発症しやすいことがわかっています1)
  • 肺NTM症のリスク因子は、呼吸器疾患と呼吸器疾患以外に大きく分けられます 表1 1)
表1

肺NTM症のリスク因子

呼吸器疾患
(主に肺構造の破壊をきたす疾患)
気管支拡張症
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
胸郭異常
肺がん
呼吸器疾患以外
免疫抑制剤・抗TNF製剤・ステロイド剤の使用
低体重
関節リウマチ
胃食道逆流症

Prevots DR, Marras TK. Clin Chest Med. 2015;36(1): 13-34.より作成

  • 呼吸器疾患のうち肺NTM症のリスク因子となるのは、肺構造の破壊をきたす肺疾患が主で、気管支拡張症や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、胸郭異常、肺がんなどが報告されています1)
  • 呼吸器疾患以外のリスク因子としては、免疫抑制作用のある薬剤〔免疫抑制剤や抗腫瘍壊死因子(TNF)製剤、ステロイド剤〕の使用、低体重、また関節リウマチや胃食道逆流症などの基礎疾患が報告されています1)

気管支拡張症と肺NTM症

  • 気管支拡張症は、さまざまな基礎疾患が原因となって末梢の気道が感染や炎症を繰り返し、気管支に不可逆的な拡張をきたした状態です。慢性の感染を繰り返すため、特に、NTMを含む抗酸菌や緑膿菌の感染に注意が必要です3)
  • 気管支拡張症は肺NTM症のリスク因子であることがわかっていますが1)、その逆に、肺NTM症が原因となって気管支拡張症を生じることもあります。
  • 気管支拡張症がNTM感染により生じたのか、他疾患による既存の気管支拡張の部位にNTM感染が生じたのかを区別することは、経過を追えていない症例では困難であり3)、留意が必要です。

リスク因子としての関節リウマチ

  • 関節リウマチは、肺NTM症のリスク因子であることが明らかになっています1)。関節リウマチ患者は気管支病変や間質性肺炎を高率に合併することや、しばしば生物学的製剤が用いられることが関連していると考えられます2)
  • 関節リウマチに合併する気道病変の画像所見と肺NTM症の画像所見は酷似しており、画像診断からこれらを鑑別することは困難です2)
  • 肺NTM症と診断されたら、生物学的製剤の投与は原則禁忌ですが4)、中止すると関節リウマチが悪化してしまうケースもあります2)。したがって、生物学的製剤の治療効果と、免疫抑制による肺NTM症への影響について、そのバランスを考慮した判断が必要になります。日本呼吸器学会は「炎症性疾患に対する生物学的製剤と呼吸器疾患診療の手引き」を発表しており、こうしたケースへの対応を解説しています4)

症状

咳嗽や発熱などが発現しますが
無症状なことも

肺NTM症の主な症状

  • 肺NTM症の症状は、感染に伴う全身症状と、局所の炎症進行によって起こる呼吸器症状が主体となりますが 図1 、無症状あるいは症状があっても軽度に留まることがまれではありません2)
図1

肺NTM症の主な症状

肺NTM症の主な症状 肺NTM症の主な症状

日本結核病学会 編. 非結核性抗酸菌症診療マニュアル. 医学書院; 2015. pp.46-58.より作成

  • 全身症状は初期には軽度ですが、進行に伴い発熱・夜間盗汗、全身倦怠感・易疲労感、体重減少などを呈するようになります2)
  • 呼吸器症状は、局所の炎症進行に伴い、咳嗽・喀痰、血痰・喀血、息切れ、呼吸困難、胸痛などが発現します2)
  • 肺NTM症の症状は多彩かつ非特異的です。そのため、併存する呼吸器疾患がある場合は、肺NTM症か併存疾患のどちらが原因の症状なのか判断が難しいこともあります2)。特に、肺NTM症は肺結核と似た症状を呈することが多く、その鑑別は重要です2)
  • 国内単施設における2004~2006年の新規肺MAC症患者309例を対象とした調査では、症状の頻度は 図2 に示すとおりでした5)
図2

肺MAC症患者の症状の頻度

肺MAC症患者の症状の頻度 肺MAC症患者の症状の頻度

対象・方法:2004~2006年に国内単施設で新たに肺MAC症と診断された患者309例を5年間追跡調査。
Morimoto K, et al. Ann Am Thorac Soc. 2014; 11(1): 1-8. より作成

健康診断や他科診療から
明らかになることも

  • 肺NTM症の初期は無症状のこともまれではなく、健康診断や他疾患診察中に画像検査がきっかけとなって、偶然、診断されることが少なくありません4)

REFERENCES

  1. Prevots DR, Marras TK. Clin Chest Med. 2015;36(1): 13-34.
  2. 日本結核病学会 編. 非結核性抗酸菌症診療マニュアル. 医学書院; 2015.
  3. 佐々木結花 編. 結核・非結核性抗酸菌症を日常診療で診る. 羊土社; 2017.
  4. 日本呼吸器学会, 生物学的製剤と呼吸器疾患・診療の手引き作成委員会 編. 炎症性疾患に対する生物学的製剤と呼吸器疾患診療の手引き 第2版. 克誠堂出版; 2020.
  5. Morimoto K, et al. Ann Am Thorac Soc. 2014;11(1): 1-8.